千疋屋のちょっとした優雅な午餐part1(その2)

かくて……

いよいよメインの二品目となる

肉:「和牛のステーキ」

フランス料理の定番と言えば、今でこそバリエーションに富んだものが多いですが…
それこそ、クラシックな流れで言えば、「ステーキ」と言うのが定番中の定番であったと言えるでしょう。

何がフランス料理のメインに相応しいか…?と言うのは…その時、その時の”料理の主題”と言う事にも左右をされるとは思いますが…
しかし…「牛のステーキ」と言うのは、未だにメインディッシュとして確固たる地位を占めている…と言う様に思います。

さて…この千疋屋のステーキですが…
流石に、ステーキの美味しさを心得ていらっしゃる…と言う表現にでもなりますでしょうか?
重すぎず…さりとて軽すぎず…
さらっと自己主張をしている…と言う組み立ての仕方に千疋屋千疋屋たる所以を感じるところです。

もちろん、「肉」の美味しさもさることながら…付け合せの野菜の油の通し方(油のまわし方)が程良いのが嬉しい限り。


さて……「魚」「肉」と来て……〆へと向かう訳ですが…

ご飯もの:「オムライス」

洋食の老舗としての象徴でも言いますか…
燦然と「黄金色」に輝くオムライスの登場であります(これは、オムライスに決められているわけでは無く…幾つかからの選択制)。
ムラの無い卵の黄色さ……薄さと言い…厚さと言い…まるで”上等なフェルト”の様なオムライス……

まさに”千疋屋のフレンチ”を語る一品でもありましょう。

そして…この黄金色の衣を艶やかに彩る「トマトケチャップ」……このトマトの自然な…そして意表を突く甘さが…
今ここで”千疋屋”で食事をしている…と言う事を舌と脳裏に焼き付けてくれるのです。

「トマトがこんなに甘いなんて……」
「卵がこんなに上品に焼けるなんて……」

デザート:「フルーツも盛り合わせ&パッションフルーツのソース」

いよいよフィナーレとなるわけですが……
「フルーツ」の良さは、千疋屋ならではと言う事になりますが…
ここで非常に鮮烈な印象を残してくれたのが…”パッションフルーツのソース”
一口食べて…パッションフルーツ独特の甘酸っぱい味が駆け抜けて行きます……
単純に奇を衒った刺激と言う事では無く…フルーツの事を知り尽くしているからこそ出来る”直球の奇策”と言うべきでしょうか(w

何の変哲も無いデザートが…ソースによって一変する……それは、まさに能や演劇における空間の変化を楽しむにも似ている…
と言えば、少し大仰になるでしょうか?
いえいえ…これは嬉しいサプライズ…と言うデザートの刺激でありました。



千疋屋のランチコース”……それは、今までの千疋屋のノウハウと姿勢が結集されたメニューの組み立ての一つなのでしょう。
それなりの品数を楽しみつつ…かと言ってお腹も舌も満足させて……
なおかつ…お昼であるので…必要以上に一杯にもなり過ぎない…
その”間合い”と言うものに、”老舗”としての実力を感じるところなのでありました。