アバンギャルドな虎屋のお菓子

フランス料理を始めとして様々な料理が伝統をベースにしつつも
如何にして、現代風のアレンジを加えて行くのか?
と言う事に日々直面し、日々格闘をされている…と言う側面を持つのも今の一つの潮流だと思うのだが…
その伝統の「枠」とのギリギリの鬩ぎ合いと言うべきか…
”踏み込み”と言うべきか…
「モダン」⇔「クラシック」の境界を巧く表現しているモノに出会うと
(・▽・):「素晴らしい!」とエールを送りたくなる訳です(w

そんな中……何気に「和菓子」の名門の「虎屋」の作品は面白いなぁ……と。

ルーブルの光・黄」

何とも度肝を抜かれたのが、これ……
どうやら、”虎屋パリ”の20周年記念で作られたお菓子の様ですが…
ルーブルにある「ピラミッド」をモチーフに、「玉羹」で作る…と言う作品。
その”造形”と言う部分にもシャッポを脱ぐ訳ですが…
この様なモノを作ろうとした”意思”に対して、尚更の事…頭が下がる部分であります。


「西瓜」

お次は”スイカ”……
夏の風物詩でもあるスイカは見ているだけで涼を誘うもので
今年のように激烈な暑さと湿気を体感した夏には
この”造形の妙”を見るだけで、水菓子は出せないけれども涼しくなって欲しい…と言う亭主の心意気が伝わって来そうです。
(※ 無論、それは「虎屋」の心意気もですがw)

まぁ…あくまで…個人的な趣味と言う事にもなるのだと思いますが…
「スイカ」と「柿」のお菓子を食べたい♪
と言うスタンスからは、ちょっと嬉しい部分なのですが…

やはり、そこは「和菓子」と言う部分と「スイカ」と言う果物が持つ部分との折り合いもあるのでしょうが…
「西瓜餡」と言う形で…
あの「スイカ」の持つ、みずみずしさと…独特の甘さを表現していてくれたならば
(と言っても…それは至難の業なのだと思いますが…)
なお…良かった、と。

そこは、お茶のお菓子なので「餡」と「羹」と言う事で十分であろうし…
奇を衒う必要も無いのだと…言われればそれまでなのですが…(w

「ささくり」

この篠栗は、「造形」としても…「味の構成」としても非常に見事な一つでしょう。
団地の緑色のイガイガが非常に好奇心をそそる所ですし…中にある「栗」の形も大変に良くできていて
凄く凝った作りになっています。
先ほどの「ルーブルの光・黄」や「西瓜」が、新しいジャンルへの切り込みと言う事を彷彿させてくれるお菓子だとすれば
この「ささくり」は伝統における造形と味覚の集大成と言う事も言えるのかもしれません。

「緑地の金団の味」「黒い栗の羊羹の味」「栗の中の白い餡の味(これは写真で撮れませんでしたがw)」
これら三つの味の重なりを味わうと共に…抹茶の味と乖離していない…
これは、非常に素晴らしい…まさに長い時間を掛けて…そこに落ち着いた…日本の和菓子の姿の一つを見るような気がします。


「黒梨」

秋を迎えるにあたって、ひとそよぎ涼風と言うべきか…秋風を感じさせる一品ですが
「梨」と言う造形の妙も素敵ですが…この黒いフォルムに官能的なものさへ感じさせてくれるところも、また一つ。
加えて…このフォルムを体現しているかの様に…
中の「餡」を「葛地の水羊羹」の柔らかくも、弾力のある舌触りが包みます。
同じような「餡」「羊羹」と言う組立や「黒い梨」と言う部分で、「黒(ノワール)」の持つ奥深いイメージを持たせつつ
意表を突く”柔らかい舌の感触”と”和らかい甘さ”が、このお菓子が非凡なモノである事を感じさせてくれます。

この「フォルム」…「この柔らかさ(形も味も)」……そして…黒い茶碗で飲む「抹茶の緑」……

その一つで、場の雰囲気をガラッと変える様な一品…
それは、まさに「お茶菓子」も他の茶道具に引けを取らない…むしろ下手な茶器よりも素晴らしい
と言う事を感じさせてくれる“大きな存在感”でもありました。